「悪童日記」が予想外&想像以上で面白い
こんなにもテンポよく話が展開していく本を久しぶりに読みました。
「悪童日記」という訳題のタイトルは、もとの原題を直訳すると「大きなノートブック」というような意味だそうです。
その名の通り、子どもが見たままを日記に記したような、そんなタッチで書かれています(子どもらしさは全くありません)。
その子どもとは双子の少年たちのことで、賢く逞しく生きていく様が描かれています。
労働をし、自己学習をし、そして精神的に強くなれるよう鍛錬をする、そんな日々です。
余計なことを考えずに話を追える
作文を〈大きなノート〉に清書する。
「良」か「不可」かを判定する基準として、ぼくらには、きわめて単純なルールがある。作文の内容は真実でなければならない、というルールだ。
ぼくらが記述するのは、あるがままの事物、ぼくらが見たこと、僕らが聞いたこと、僕らが実行したこと、でなければならない。
(中略)
「従卒は親切だ」と書けば、それは一個の真実ではない。
というのは、もしかすると従卒に、ぼくらの知らない意地悪な面があるかもしれないからだ。
だから、ぼくらは単に、「従卒はぼくらに毛布をくれる」と書く。
このように、双子が見たものそのままが書かれています。
余計な感情表現はありません。また、余計な情報は省かれています。
この少年たちをはじめ、登場する人々の名前すら書かれていません。
だからとてもわかりやすいし、頭にスーッと入ってきます。
余計な情報が入ってこないから、少年たちの姿をただひたすら追うことができるのです。
少年たちが何を見て何をしたかを知り、そしてその世界がどういうものなのかを知ることができるのです。
なんだか遠くの物陰から彼らを盗み見ている感じで、目が離せませんでした。
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生き抜くために
ある時少年たちが乞食の練習をします。
それは乞食をした時にどんな気持ちになるのかを知るためと、人々の反応を観察するためです。
またある時は残酷なことの練習もします。
家畜の若鶏を殺し、殺すことに慣れる練習です。
こうやって自分たちで考え実行することで世界を知り、生きていく知恵を身につけます。
毎日の練習で身についた心身の強さだったり冷酷さはあらゆる場面で生かされています。
他とは違った彼らの世界が面白くもあり、彼らの言動はとても痛快です。
戦争による悲観的な感情よりも、少年たちのあっぱれな姿だったり、酷さに釘付けになりました。
時代背景
性的なシーンが幾度かありますが、やはりそこでも少年たちの感情は書かれていません。
見たままが書かれていて、戦時中はこんな感じだったんだろうなぁ、と想像できました。
細かな設定はされておらず、いつの時代か、そこがどこかも書かれていません。
しかし、著者は1935年生まれでオーストラリア出身ということから、舞台は第二次世界大戦のハンガリーということになるようです。
ハンガリー国内にいる外国人というのはドイツ軍のこと。
そして、連行される人々というのがユダヤ人ということです。
それを頭に入れた上で読むと、その時その場所でどんなことが起きていたかが、よりリアルに伝わってきます。
読み終えて
表紙の絵、読み終えてようやくどんな意味があるのか理解できました。。
最近は読書をする時間があまりなかったけど、久しぶりに読んだこの本は本当に読んでよかったと思います。
一気読みしてしまったほどで、読むのが遅い私でもさほど時間をかけずに読み終えることが出来ました。
読書したいけど、時間があまりない・・という人にもサクサク読めるのでおすすめです。
「悪童日記」には続編があるということで、続きが気になるし早く読みたいです。
- 作者: アゴタクリストフ,Agota Kristof,堀茂樹
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2001/05
- メディア: 文庫
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