灰色の朝のモノローグ

からっぽになって、それでまた寝るの。おやすみなさい。

実は恐怖が潜んでた!何気なく見てた絵の裏にあるもの

『怖い絵』。タイトルからして気になるこの本が紹介いるのは16世紀から20世紀の西洋名画。

安易にグロかったり惨殺的なものだったりを想像したのですが、この本に取り上げられている絵はそれらももちろん含まれてますが、そうでないものもあります。一見普通の絵。肖像画だったり舞台で踊るバレリーナの絵だったり。ではこれの何が恐ろしいかというとその絵に隠された背景。絵画にあまり関心がない私が見ただけでは決して捉えることの出来ない物語や画家の込められた思いがあり、これが怖さのポイントとなっています。そしてその怖さに気づいた時、絵の面白さに気付かされます。

解説には事細かに時代風景や書き手の心情などが書かれています。何も知らない私は”なるほど、確かに”と思うことがほとんどで、特に気になったものを幾つか紹介します。

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「エトワール、または舞台の踊り子」

バレリーナがステージで美しく踊っている姿が描かれています。描かれている角度が正面でなく斜め上からで舞台袖にいる黒尽くめの男が見えている。これによって”娼婦”という言葉が見えてきて、この時代のバレリーナの存在がどういうものだったかがわかる。

「ガニュメデスの誘拐」

大鷲に子どもが連れ去られる、というか掴まって何処かへ行こうとしている絵。ただの鷲とかわいい子どもだと思ったけれどそうではなかった。鷲にも子どもにも意味があり、そこには”同性愛”という言葉が隠れています。

「我が子を喰らうサトゥルヌス」、「ホロフェルネスの首を斬るユーディト」

見るからに怖さが伝わるもの 、隠された怖さとは違い直接的に感じる怖さがあります。

タイトル通り子どもを食べている男、男の首を切れ味悪そうな剣で女が首を切っているもの。これは背景を何も知らなくても怖いです・・。

「グラハム家の子どもたち」

これはさほど怖さを感じなかったものの一つ。

1742年のこの油絵は幸せそうに微笑む子どもたちが描かれています。背景には大鎌を持った天使像が。この大鎌は無慈悲に人の命を刈る死の道具として、古来から絵画に取り入れられてきたもの。その天使の下には砂時計がある。これは時の移ろいと忍び寄る死が二重に示されているもの。

素人目線でどうしても手前の子どもにばかり気を取られて背景のそれらには解説を読むまで気づきませんでした。他にも猫や鳥、乳母車などただの飾りとしてでなく裏にはきちんとした意味があるものが描かれています。乳母車には鳥の飾りがついていて、他に生きている鳥が描かれているが、それに照応して羽ばたいている。羽ばたく鳥は魂が肉体からぬけだす象徴なんだとか。そしてその乳母車に乗っていた子どもは絵の完成後あっけなく病死してしまったそう。昨日まで元気だった子どもが今日には葬られるということが日常的だった時代。なのでもちろんここでも単なる偶然と解釈していますが、ではなぜ描き手は乳母車をこのように表現したのだとか、それまでの作品に死を描いてきただけに単なる偶然ではなかったのではないか。

と言った具合に憶測の範囲で怖さに触れている。

確かにそう捉えると怖いけど、なんだか都市伝説的な感じ。私はそこよりも描かれているモノ一つ一つが死のシンボルだということの方が驚きで怖さも感じました。

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 読んでみて

絵を見てそれから解説を読む。細かずぎて気付かなかったモノがあることがわかりまた絵を見る。また解説を読んで潜んでいた怖さを確認してまた絵を見る。どの作品もこれの繰り返し。だからかなり時間をかけて読みました。そしてその分ページ分以上のボリュームがあるように感じられて得した気分にもなりました。

文字がない分、見る人によっていろんなふうに解釈されるのもまた絵の面白さ。

今まで表面的に見てたけど、もし今後このような絵を見る機会があったら間違いなく隅々まで何も見逃すまいとまじまじ見てしまいますね。

一つ残念だったのがページをまたいで載っている絵。本を大きく開いても綴じている部分がどうしても見えないので全容がよくわからないのです。多少不便でもいいから横向きではなく1ページに縦向きに載せて欲しかった・・。

 

そしていつものように表紙の絵を描いたのですが、右の女性がどうしても上手く描けずマツコ・デラックスみたいになってしまいあえなく断念。こういう絵を描く人って凄いんだなぁとつくづく関心してしまいました。 

怖い絵  (角川文庫)

怖い絵 (角川文庫)