10歳でホームレスになった少女の物語『10歳の放浪記』に胸を突かれた
1960年から一年の間、10歳でホームレスとなった少女の話。著者は児童文学作家というだけあってとても読みやすい。小難しい表現はなく、子どもでも読めそうです。
父親が酒癖が悪くて暴力的でも、母親が毎日の生活や父親の愚痴をこぼしても、何かいいところを見つけて前向きに生きる。毎日食べ物や寝床の心配、学校にも行けない。だけどその中で良いことをみつけて自分を励ます。まだ10歳なのに空気を読んでわがまま言わないそんな姿が健気で胸が痛かった。
だけどやっぱり子どもらしさもある。学校や放浪する先々で感じる子どもならではの感性は可愛らしくてほんわかもした。
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読んでみてわかったけど、この時代必ずしもいい人たちばかりではない。戦後さほど時間が経ってないからお金に困ってる人も少なくない。貧しい自分たちを煙たがる親戚だっているようだった。
けれどもそういう人ばかりではない。出会った人たちの中には心の温かい人も多い。見ず知らずのその日会った人が食べ物や寝る所を与えてくれる。生きるためにお金の稼ぎ方を教えてくれる。
子どもだからかも知れないが、今そんなことをしたら確実に通報されますね。見ず知らずの大人が一人でいる子どもに近づけば、それだけで不審がられます。
食べ物にも毒物が混ざる時代。そう思うと、なんだか今とはぜんぜん違う世界に感じる。
ケネディ大統領の就任演説で、「国が何をしてくれるかでななく、国のために自分が何をできるのか」を聞いて、親のために子が何をできるか。つまり自分が働いて稼げばいい。そんなふうに10歳で考えるんだから凄い。
でも偉いとも思うけどもなんだか悲しくもなった。それが”いつか大人になったら”の話ならわかるけど、その歳でというのだから。父親に子どもを預けた母親は去り、唯一身近にいる父親からは”死のうか”、”お前を育てるのに疲れちゃったよ”と言われる。すがりつくしかない親に自分が重たい存在だと言われるのだから、それはどんなに辛いことだろうか・・。そんな辛い日々を過ごしながらも、周りの優しさを感じながら生きた女の子のお話です。
本にはこの一年間しか書かれていませんが、その後もいじめにあったりと辛い時代だったようです。それでも前向きに我慢強く生き抜き、今や才能あふれる作家さん。そして教育委員会の員長を務めているそう。過酷な日々を過ごしてきたにも関わらず、今や人を導く仕事をしている。著者自身も信じられない”その後”だというくらいで、本当にすごいことですね。
読んでいるだけでもその世界に引き込まれて退屈はしませんが、自分も前向きに頑張ろう。そんな気持ちにさせてくれます。