どこか懐かしくて温かい。『狐笛のかなた』の世界が心地いい
夕日をうつして金色に波打つように揺れるすすきの原。
春には満開の桜が山と野を雲のように覆い、雪解け水が軽やかに流れる。
想像するだけでほっとできる日本の姿がこの物語『狐笛のかなた』に広がっている。
静かで穏やかな時間が欲しい時ってありますよね。時々ガチャガチャした暮らしにため息をつきたくなる時、そんな場所へ行きたいと思います。
著者が言う心の底にある”懐かしい場所”という感覚が本を読んでよくわかります。
私もその懐かしさを感じるから。
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まだ子どもだった頃に助けられた子狐が、助けてくれた女の子に恩返しするというもの。いつもそばで見守っていくうちに、愛おしいという感情が芽生える。
しかしその狐は人間に仕える存在。その主にとって邪魔な存在がその少女だった。
人間とそうでないモノの健気な恋の話。
時代はいつとは限定していないようですが、移動手段が馬で武器は刀。ということはなんとなくあの時代に近いのかなぁと想像は出来ます。
呪術に使い魔、天狗。こんな単語が並ぶ『狐笛のかなた』は、その懐かしい情景に癒やされながら、和風ファンタジーの世界を楽しむことができます。
ファンタジーってきくとワクワクします。現実にないその世界に惹かれる。
この本はいかにもな洋風ファンタジーとは違う和風ならではの世界があります。懐かしくてほっこりもできる、この身近な感じがまたいい。
私は名前が沢山出てくる話は結構苦労します。今回のも例外ではなく、始めはいろんな名前に混乱してごっちゃになりました。いつものように何回かページを行ったり来たり。名前とキャラクターを一致させたらあとはスムーズ。余計な考えをせずに物語に浸れます。
この物語を読み終えたあとのホっとした気持ちは心地いいです。