女子目線で描かれた戦争もの漫画『cocoon』は柔らかな絵で女性でも手に取りやすい一冊
もし自分が繭だったらこんな世界には出てこないだろう。(中略)
誰も死にたくなんてなかった。
女の子が死体の中で立ち尽くしてそんなことを思ってる。
死ぬことを割り切れるひとなんてそうはいないはず。
銃弾が飛び交うなか、死ぬかもしれない恐怖は想像することができるけど、それはなんとなく、多分の範囲。
『cocoon』は、柔らかいタッチで描かれてるけど、残酷な描写。
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cocoon。繭のこと。
繭に包まれて守られたい。
私も、今を生きていてもそう思った。
自分は現代で恵まれた環境の中暮らしているはずなのに、恩恵を受けているはずなのに、それなのに時々何もないところへ行きたくなる。
いろいろが複雑で疲れてくる。
贅沢でわがままなだなぁ。
人が焼け焦げたにおいを嗅ぐことなんてないし、体中血まみれの人の叫び声を聞きながら応急処置をすることもない。自分が怪我をしてもウジがわくまで放置しなくても病院に行ける。死んだ友達をその辺の死体置き場に捨てることもなければ、ご飯を銃弾が飛び交う中取りに行くこともない。
漫画「cocoon」はそんな体験をした、ひめゆり部隊として戦時中お国のためにと命をかけた女子生徒のお話。
戦争でどれだけ厳しい状況だったか、まだ夢も希望もあってやりたいことがたくさんあるのに、残酷な世界に飛び込まなくてはならなかった女の子たちのことを、絵を通して具体的に伝えてくる。
死と隣り合わせで常に死と向き合い、潰されてしまわぬよう想像の糸でまゆを作り、自分を守る。
まだ100年も経ってない最近の話。
著者は今日マチ子さん。
淡い色使いとやわらかなタッチが好き。
自身のセンネン画報というサイトにイラストがたくさんあります。
今は今で問題がたくさんあってその頃と今を簡単には比較できないのかもしれないけど、明らかに今私は楽をして生活してます。
炊事洗濯その他諸々、私の代わりに文明が仕事をしてくれてる。
恵まれてる。そう思うのになんで”今”が辛くなる時があるんだろう。
恵まれてるんだと実感したいときはこれを読んでみよう。
現実に向き合えるから。
もっと明るく過ごそうって気分にもなる。
気分転換に静かな、のどかなどこかへ行きたい。
滝の傍まで行って天然のミストシャワーを浴びてリフレッシュしたい。
ただただ空が高くて周りになにもなく畑が広がっているのを眺めるのもいい。
遠くから聞こえてくるトラクターの音をぼんやりと聴いてぼーっとする。
はたから見ると怪しいですが、そうやって誰を気にすることもなく過ごしたい。
戦後なにもなくなった日本が頑張って今をつくりあげたのに、何もないところへ行きたいなんて皮肉だなぁ。
戦争もの漫画だけど、グロさが全面に出てるわけではないので読み終えた後味は悪くない。